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荒浜・藤塚住居調査 玄関03-石材

●玄関/石材


《那智石》 玄関_20_荒浜_20120707_2 踏み込み:玄昌石張り
ポーチ:那智石張り
ボーダー:モルタル仕上
玄関:玄昌石張り
柱沓石:自然石

この住まいは純和風の家で、茶道や華道のたしなむ人たちがすむ住まいだったのではないだろうか。
使用されている材料がそれを連想させる。
住まいは住む人の人柄や趣味、生活観、歩んできた道が反映されてくるような気がする。
撮影地区:藤塚
撮影日:2012年7月7日



《那智石》 玄関_21_荒浜_20120320 ポーチ:那智石
玄関:モルタル金鏝押え松煙塗布、大理石張り(本磨)
基礎:秋保石

ここにあった古い住まいの様子がしのばれる。
基礎の秋保石はかなり古く、コンクリート使用以前の工法だ。
かつての玄関は客を迎えるその家の顔。玄関やポーチには趣味のよい和風建築の贅沢な材料が使われている。
代々続く裕福な家柄で豊かな暮らしがあったことがわかる。
撮影地区:荒浜
撮影日:2012年3月20日



《那智石》 玄関_22_荒浜_20120707 ポーチ:モルタル金鏝押えカラークリート仕上げ
玄関:那智石張り
撮影地区:藤塚
撮影日:2012年7月7日



《玉石》 玄関_23_荒浜_20120405 ポーチ:モルタル鏝押え
玄関:玉石
撮影地区:荒浜
撮影日:2012年4月5日



《那智石》 ポーチ:モルタルカラークリート仕上げ、那智石張り
玄関:モザイクタイル張り
基礎:秋保石

ここも歴史ある住まいだった。秋保石の基礎である。
なんとモダンで素敵な玄関とポーチだろう。
和風の 那智黒石を埋め込んだ床と戦後開発された緑色のカラークリート仕上げ、玄関床のこげ茶色の斜めに貼ったモザイクタイル。
床からだけでもこの家の繁栄がしのばれてくる。
撮影地区:荒浜
撮影日:2011年12月21日



《那智石》 アプローチ:モルタル鏝押え
ポーチ:150角磁器タイル張り
玄関:那智石仕上げ

玄昌石をイメージしたポーチの磁器タイル張と玄関の那智石仕上げは、この家が和風だったことを想像させる。
日本の伝統文化を愛していた人たちの夢がこの住まいとなったのかもしれない。
撮影地区:荒浜
撮影日:2013年1月19日



《豆砂利》 ポーチ:豆砂利洗い出し仕上げ
玄関:豆砂利洗い出し仕上げ

玄関もポーチも豆砂利洗い出し仕上げである。
モルタルに豆砂利を混ぜて鏝塗りし、完全に硬化しないうちにポンプで加圧した水流で豆砂利を洗い出す工法。
床なので耐久性が求められ布で拭き取ったのかもしれない。
この工法から生まれる和風の仕上げの雰囲気は捨てがたい。
撮影地区:荒浜
撮影日:2011年12月15日



《玉石》 玄関_25_荒浜_20120120 玄関:玉石
撮影地区:荒浜
撮影日:2012年1月20日



《玉石》 玄関_26_荒浜_20120113 ポーチ:モルタル鏝押え
玄関:玉石
撮影地区:荒浜
撮影日:2012年1月13日



■詳細解説「私と荒浜・藤塚地区とのかかわり」髙橋親夫


私は震災後まもなく若林区荒浜・藤塚地区に入りました。その後、数ヶ月にわたって何度かこの地を訪れ、行くたびに茫然とその光景を眺めていましたが、やがて破壊された家財や建物が取り除かれてゆき、その下から荒浜や藤塚地区のそれまでのたくさんの住居跡が現れました。この地域に地層のように残されていた生活時間や文化の重なりは、佇んでいた私にたくさんのことを語りかけてきました。私は自分の生い立ちと重ねながら、残された「家」の声を聞き取ることに夢中になっていきました。

それぞれの住宅を訪問するたびに、居住していた方の、家を建てた時の喜びを思いました。残された住居跡に長年の夢や希望やアイディアが詰まっていることに気づき、当時の人たちに思いを馳せたのです。残されていたものから、施主の期待に応えようとした、職人たちの心意気を感じ取ることができました。それぞれに個性があり、二つとして同じ家はありませんでした。そして、その後そこで暮していた家族の生活の時間を思いました。

残されていた住居跡には、もう生産されていない材料や今は行われていない職人技が見られました。特に目を引いたのは、かつて盛んに行われていた左官技術の数々です。工場生産品に取って代わられた現代の住宅建築では行われていないものばかりで、できる職人もほとんどいなくなってしまった手仕事の良さが見て取れました。この地域には他のどの地域よりもそれが残されていました。

住居跡からは、残されていたものが限られていたにもかかわらず、海側にはこの地が豊かで農業と漁業の兼業生活の長い歴史があったことや、それに続く西側には新しい住宅地が広がり、自然豊かなこの地域に発展の息吹があったことを知りました。

私はこれらの生活跡がやがて復興工事と共に消滅してしまうことを思い、荒浜や藤塚地域の方々のくらしの証としての調査と、記録を始めたのです。

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