●風呂/石材
《自然石》 壁:45二丁掛けタイル張り、自然石積み上げ
床:デザインモザイクタイル張り、モルタルカラークリート仕上げ
浴室に石をくみ上げ、まるでリゾート地の温泉のようだ。
窓からは海が見え、海鳴りや波音が聞こえ、潮風が入ってくるのを湯船に浸りながら自然を味わっていたのだろう。
震災はすべての人々のくらしを消し去った。
撮影地区:荒浜
撮影日:2012年1月31日
《黒御影石》 壁:200角半磁器タイル張り
床:200角磁器タイル張り
カウンター:黒見影石(本磨き)張り
撮影地区:荒浜
撮影日:2012年4月26日
《玄昌石》 床:玄昌石張り
撮影地区:荒浜
撮影日:2012年4月26日
《鉄平石》 床:鉄平石乱張り
撮影地区:荒浜
撮影日:2012年1月19日
■詳細解説「私と荒浜・藤塚地区とのかかわり」髙橋親夫
私は震災後まもなく若林区荒浜・藤塚地区に入りました。その後、数ヶ月にわたって何度かこの地を訪れ、行くたびに茫然とその光景を眺めていましたが、やがて破壊された家財や建物が取り除かれてゆき、その下から荒浜や藤塚地区のそれまでのたくさんの住居跡が現れました。この地域に地層のように残されていた生活時間や文化の重なりは、佇んでいた私にたくさんのことを語りかけてきました。私は自分の生い立ちと重ねながら、残された「家」の声を聞き取ることに夢中になっていきました。
それぞれの住宅を訪問するたびに、居住していた方の、家を建てた時の喜びを思いました。残された住居跡に長年の夢や希望やアイディアが詰まっていることに気づき、当時の人たちに思いを馳せたのです。残されていたものから、施主の期待に応えようとした、職人たちの心意気を感じ取ることができました。それぞれに個性があり、二つとして同じ家はありませんでした。そして、その後そこで暮していた家族の生活の時間を思いました。
残されていた住居跡には、もう生産されていない材料や今は行われていない職人技が見られました。特に目を引いたのは、かつて盛んに行われていた左官技術の数々です。工場生産品に取って代わられた現代の住宅建築では行われていないものばかりで、できる職人もほとんどいなくなってしまった手仕事の良さが見て取れました。この地域には他のどの地域よりもそれが残されていました。
住居跡からは、残されていたものが限られていたにもかかわらず、海側にはこの地が豊かで農業と漁業の兼業生活の長い歴史があったことや、それに続く西側には新しい住宅地が広がり、自然豊かなこの地域に発展の息吹があったことを知りました。
私はこれらの生活跡がやがて復興工事と共に消滅してしまうことを思い、荒浜や藤塚地域の方々のくらしの証としての調査と、記録を始めたのです。