津波で大きな被害を受けた宮城県旧雄勝町に伝わる雄勝法印神楽。
600年続いたこの民俗芸能もまた、大きな被害を受けました。
【解説】
石巻市雄勝町を訪ねたのは2011年9月3日、東日本大震災から半年後だった。雄勝法印神楽保存会の千葉文彦さん、阿部久利さんの案内で、祭礼ごとに舞台を組み神楽を奉納する集落を訪ねた。
毎年、あるいは数年ごとに神楽を奉納してきた14の浜のうち、11の浜が組み立て舞台を持っていた。祭りの前日、神社の境内や祭りを取り仕切る「宮守」と呼ばれる旧家の敷地内に、集落総出で舞台を組む。幅2間(約3.6メートル)、奥行き2間半の舞台は、下手に紅白の幕を巡らせた5尺(約1.5メートル)四方の小舞台「龍宮殿」が付く。演目によりこの小舞台を効果的に使い、舞の空間に広がりをつくる。
「どこにいっても浜風はつきもの」と、阿部さんが言う奉納神楽は沿岸部の祭り。それだけに津波の被害は大きかった。10カ所の組み立て舞台が流失した。祭りの朝、神輿が練り歩いた集落の家々も、神輿を迎える舞台を組み立てた場所も、多くが更地になっていた。
文 奈良部和美(ジャーナリスト)
【撮影地点】
より大きな地図で 「口伝・でんでん舞台がきたぞ雄勝法印神楽」の撮影地点 を表示
【取材協力】
雄勝法印神楽保存会、せんだい演劇工房10-BOX、雄勝法印神楽再生実行委員会、
東建設株式会社、仙台高専建築デザイン学科坂口研究室、
えずこ芸術のまち創造実行委員会、東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)