ごうけいほうもんしゃすう

早く再開して、みんなに甘いものも食べてもらいたいと思って店を開けました

3.11定点観測写真アーカイブ・プロジェクト 公開サロン @考えるテーブル 2013年8月3日

語り手:熊谷典博さん/進行・聞き手:佐藤正実さん(NPO法人20世紀アーカイブ仙台)

■壁面が崩れた建物

2011年3月13日愛宕橋から舟丁方面へ行ったところの建物

2011年3月13日 仙台市太白区長町3丁目

[熊谷(以下、熊)]私は青葉区木町通2丁目で、『仙台駄菓子熊谷屋』をやっております。元禄8年創業の古くからあるお菓子屋で仙台駄菓子を売っている所です。震災の時は、お店も開いていてお客さんがいらっしゃって、その時に地震が起きました。まずお客さんを守らなきゃということで必死でしたね。その後、停電になったという感じです。

[佐藤さん(以下、佐)]熊谷さんはいつ頃からお店を再開したんですか?

[熊]確か、翌日には木町通辺りは電気が通じたので、その後店内の整理をして、確か4日後くらいですかね。そのくらいから始めました。ちょうど土曜日に物産展の出荷をする前に地震が起きてしまったので、商品は店内にいっぱいあったんです。早く再開して近所の皆さんに食べて頂きたいなと思ってお店を再開しました。

[佐]熊谷さんの所で扱っている商品というのは、おにぎりだとか、パンだとかではなく、お菓子類じゃないですか。その辺の、再開するときになにかこう、思われたことってあるんですかね?

[熊]地震直後からコンビニとかスーパーだったりとか、凄い行列がありまして、私も2〜3時間くらい並んで凄い大変だなという思いはしたんです。私もコンビニに行って買ったものはおにぎりですとか、ラーメン類ですとか、要は普通に食べる食料ですね。そんな中お店を開けてお菓子を売って、はたして誰が来るのかというのが一番心配でしたね。でも、食べられるものが制限されているせいもあってか、意外と甘いものが恋しくなってやってくるお客さんがあとを絶ちませんでした。

[佐]はい、分かりました。じゃあ熊谷さんが撮られた写真について話を進めていきたいと思います。1枚目からお願いしていいですか。

[熊]これは3月13日の日曜日ですね。うちのテナントが、「ザ・モール仙台長町」(仙台市太白区にある大型ショッピングセンター)の方にありまして、その様子を見に行こうと自転車で通ったときの写真です。ビルの壁が結構むき出しで凄いなという印象が強かったです。私も記録をとらなきゃなと思って、写真を撮りました。


■隆起した歩道とスーパーに並ぶ人

2011年3月13日長町のモリヤ前。道路と歩道の境が盛り上がる

2011年3月13日 仙台市太白区長町1丁目6-3

[熊]これも同じように長町の写真なんですけども、先ほどの写真のもう少し先の場所なんですけども、スーパーの行列よりも、歩道のとこの地盤が盛り上がっているところがびっくりしたので写真に撮ってみました。

[佐]こういった写真を撮ろうって思ったのってなんでなんですかね?

[熊]やはり、記録にとりたいという思いもありましたが、私はツイッターもしていまして、やはり市内の状況を家に居ながら知りたいという方がたくさんいるんじゃないかと考え、その情報の発信者の一人として役に立ちたいと思い、自転車で移動する際に気になった所を写真に撮っていました。この写真もツイッターに上げました。


■隆起し地面が割れた歩道

2011年3月13日仙台駅となりメトロポリタンホテルの下辺り

2011年3月13日 仙台市青葉区中央1丁目1-1 ホテルメトロポリタン仙台

[熊]こちらはですね、同じくうちのテナントがエスパル仙台(註:仙台駅と直結した駅ビル)の地下にもございまして、建物の中にはもちろん入れなかったんですけども、その様子を見ようと、同じ日に駅前に行った時の写真です。ホテルメトロポリタン仙台の建物の下の所なんですけど、もの凄く地盤が沈下しているというのが写真でも分かると思うんですけど、こんなのは初めて見たのですごく驚きでした。

[佐]これはホテルのどの辺になるんですか?

[熊]仙台駅を正面にして、ずっと駅沿いの南方面、メトロポリタンの方にずっと歩いたちょうど角辺りですかね。

[佐]これ、地盤が動いた跡ってことですよね、きっとね。最初、熊谷さんからこれを提供してもらったときに、写真はどう見るんだろうって思ったんですよ。動いて、こういう風に基礎の部分が溝ができて、っていうことかな。

[熊]そうですね、地盤が波打った跡ですね。


■電話ボックスに並ぶ人々

2011年3月13日仙台駅のタクシープール前の電話ボックス。ボックスの下が沈んでます。

2011年3月13日 仙台市青葉区中央1丁目 JR仙台駅

[熊]これはその近くにあった電話ボックスに並んでいる人を撮ったように見えますが、ちょっと写真では分かりづらいですけども、電話ボックスが沈んでいるんです。ボックスの中に入っている人の足元を見てもらえれば分かると思うんですけども、靴の辺りが地面より下になっているんです。電話ボックスは多分10センチちょっとくらいは沈んでいる状態ですね。それを撮った写真です。

[佐]電話ボックス自体、沈下しているんですね。これは、電話は普通に通じて使えたんですよね。

[熊]そうですね。電話自体は通っているんですね、並んでいるということは。


■仙台青年会議所が卸町で救援物資の積み込み中

2011年3月23日仙台青年会議所が卸町で救援物資の積み込み中

2011年3月23日 仙台市若林区卸町

[熊]この写真は、車の前の方にJCIと書いてありますけども、青年会議所のスタッフが支援物資を運んでいる写真です。先ほどお話したように、うちでも物産展への発送を控えていた商品が沢山あったので、店でもさばききれず、そのまま悪くしてしまうのもすごくもったいないなと思っていました。ちょうど青年会議所で石巻や気仙沼の方に支援物資を運ぶということを聞きまして、それでうちのお菓子を持っていった写真ですね。私は青年会議所に当時入ってまして、いろいろ協力できたらなと思って、その一環として手伝いをしていました。

[佐]3月23日となってますけど、これは第1便なんですか?

[熊]けっこう青年会議所は動きが早くて、震災直後からいろいろ動いてましたから、これより前から物資を運んでいたと思います。これは仙台青年会議所だけではなくて、宮城県、全国から有志の方が集まって手伝ってもらっています。

[佐]熊谷さんの所はお菓子を支援物資として出して、他のお店の人たちはそれぞれの自分たちのものを?

[熊]食べ物だったり、飲み物だったり、毛布だったり、着るものだったり、なんでも支援物資になりそうなものを会員の企業から集めてました。

[佐]これはやっぱり結構続いたものですか? 3月23日の前からやっていて。

[熊]そうですね、結構何回もやってたみたいです。私はこの回だけの参加だったんですけども。


■荘厳寺の「逆門」脇の壁が崩壊

2011年3月26日、新坂通りにある荘厳寺の逆さ門の両脇の壁、崩壊。

2011年3月26日 仙台市青葉区新坂町12-1 荘厳寺

[熊]これは仙台市の北山界隈、新坂通にあります荘厳(しょうごん)寺というお寺の山門です。この山門は、伊達騒動で有名な原田甲斐という人物の、片平の方にあったお屋敷の門を荘厳寺に移築したもので、その門の両脇の塀が壊れているという写真なんですね。実は私の子供はここの隣の保育園に預けていて、それで撮ったという写真でもあるんです。この両側の塀は壊れはしましたが、この歴史的な建造物だけは残って良かったなとホッとしています。

[佐]お子さんの保育園が隣なんですね。

[熊]保育園の園長さんがここの住職さんなんです。

[佐]そうなんですか。今日は、これをなぜ撮りに行かれたんですか、と聞こうと思ってたんですが、隣だったのね。はい、わかりました。ありがとうございます。


*この記事は、2013年8月3日にせんだいメディアテークの考えるテーブルで行われた『3.11定点観測写真アーカイブ・プロジェクト公開サロン「みつづける、あの日からの風景」』で、熊谷典博さんがお話された内容を元に作成しています。


当日の様子はこちらからご覧いただけます。
《考えるテーブル レポート》→http://table.smt.jp/?p=4368#report


【3.11定点観測写真アーカイブ・プロジェクトとは】
このアーカイブ・プロジェクトは、東日本大震災で被災した宮城県内各市町の震災直後の様子、および震災から定期的に定点観測し復旧・復興の様子を後世に残し伝えるために、市民の手で記録していくものです。これから市民のみなさまから記録者を募っていくとともに、その情報交換・活動の場を公開サロンとして定期的に行っていきます。これらの定点観測写真は、NPO法人20世紀アーカイブ仙台とせんだいメディアテーク「3がつ11にちをわすれないためにセンター」で記録・公開し、市民参加で震災を語り継ぐ記録としていきます。

NPO法人20世紀アーカイブ仙台
公式Web:http://www.20thcas.or.jp/

【考えるテーブルとは】
人が集い語り合いながら震災復興や地域社会、表現活動について考えていく場を「考えるテーブル」と題して、せんだいメディアテーク、7階スタジオに開きます。トークイベントや公開会議、市民団体の活動報告会など多様な催しを行っていきます。

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